入試現代文のための要約(中)ー 意味段落

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こんにちは。

本日は、実際に要約する上での技術について、紹介させていただきます。主に下準備と意味段落にまとめる方法についてです。

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下準備をする

まず、下準備です。

本文の文字数(長さ)を確認する

事前に本文の文字数を調べておいて、要約する文字数を決定します。大雑把に、本文の2割程度、でもいいのですが、私は本文の文字数に対して2割を掛けて100字単位で四捨五入しています。例えば、本文の文字数が大体3200字ならば、3200に0.2を掛けて、その積である640を100字単位で四捨五入して、600字ということです。

縦書き原稿用紙を用いる

ちなみに、書くものは縦書きの原稿用紙です。字数を数える手間がかからず、手に入りやすいからです。もし、小論文で要約が必要ならば、小論文の解答用紙は普通、横書きなので横書きで使いましょう。要は「慣れ」をつくっていきたいからです。書き方は400字以上での要約ならば原稿用紙の書き方で書き、300字以下ならば記述試験の字数指定問題の要領で、厳密に一文字一マスを守って書きます。

要約作業を行うときの道具ですが、まだこれから大学受験があるみなさんはパソコンは使わないほうがよいと思います。大学受験はまだ当分、紙と鉛筆(シャーペン)で行われるからです。道具が違えば、やり方も随分と変わってきます。

形式段落の番号を打つ

最初に形式段落に番号を打っておきましょう。本文全体を一括して捉える視点を持つとともに、そのあとの意味段落にまとめなおす作業を楽にするためです。なお、このとき、引用部分には番号を打ちません。実は、打っても打たなくてもどちらでもかまわないのですが、引用部分の書き方は文章によって異なっており、その都度打ち方を考えるのは効率がよくないので、私は、引用部分には、たとえ形式段落を構成していたとしても、番号を打たない、で統一しています。

前文・出典・注釈を見る

下準備の最後に、前文は、もしあれば、それを読み、出典と注釈を軽く眺めます。前文は、導入としても本文の解説としても、本文理解の上でとても重要なので、丁寧に読んでおきたいところです。出典については、本文全体の的確な要約になっていることもありますが、本文は出典の一部に過ぎないことが多く、また商業的観点から付けられていて必ずしも内容を的確に反映していないこともありますので、参考程度に眺めておくのがよいでしょう。注釈は、この言葉に注釈があるのだな、ということを確認しておけば十分です。必要があれば、あとで丁寧に読めばよいと思います。

意味段落にまとめる

下準備はここまでにして、いよいよ本文を読み、意味段落にまとめなおしていきます。

なぜ意味段落にまとめるのか

最初に、要約する上でなぜ形式段落を意味段落にまとめなおす必要があるのか、確認しておきましょう。なぜ意味段落にまとめなおす必要があるのかということを理解していたほうが、実際の作業を柔軟に行うことができると思います。

キーワードやキーセンテンスを選びやすくする

意味段落にまとめなおす理由は、キーワード、キーセンテンスを選びやすくするとともに、キーワードやキーセンテンス相互の論理関係を明らかにするためです。

キーワードやキーセンテンスの見つけ方には、「入試現代文のための要約(下)ー キーセンテンス」で示すように独自の技術があり、必ずしも意味段落の確定が必要なわけではありませんが、意味段落が確定することでその技術を用いやすくなり、精度も上がります。

キーワードやキーセンテンスの論理関係を明らかにする

また、キーワードやキーセンテンス相互の論理関係を明らかにする点については、キーワードやキーセンテンスがわかったとしても、それらの相互関係がわかっていないと、要約はただの文の羅列になってしまい、まとまりのあるものにならないからです。適切な要約をつくるためには、キーワードやキーセンテンスの相互関係の理解が必要です。そして、その相互関係を理解するためには、形式段落を意味段落にまとめなおすという作業が最も適切だと思います。

なぜなら、意味段落にまとめなおす過程においては、単に形式段落の集まった大きな固まりをつくるだけでなく、それらの固まりの相互関係についても理解が深まるからです。意味段落相互の論理関係に気づいていかなければ、自信をもって意味段落にまとめなおすこともできない、といってもいいでしょう。そして、キーワードやキーセンテンスというものは、意味段落において当然、核となる表現ですから、意味段落をつくりその相互関係がわかる過程で、その論理的な相互関係も自然とわかるのです。

難しくなりすぎないか

ここで、次のような疑問を持たれる方もいると思います。「要約というのはとても大変な作業で、書くことだけでも高いハードルなのに、その前に意味段落にまとめなおす作業まであるならば、要約までいきつかないのではないか」

このご指摘は全く正しいことだと思います。とりあえず指定字数の要約を書ききる、という点が課題であるならば、私がここに書いている方法はハードルが高いと思います。指定字数で要約を書ききる、という点を課題とするならば、キーワードやキーセンテンスの見つけ方を説明して、それらを元にして、まずは指定字数を埋めさせる、という方法が適切だと思います。そして、書き上げられたものに対して、先生か誰かが、文同士のつながりや本文との異動について説明・添削するのがよいでしょう。

しかし、今ここで私が取り組みたいことは、その文同士や本文との異動について、他者から説明を受けずとも極力自力で的確に要約する方法の提示であり、また、そもそもこの要約学習法を提唱するスタート時点に戻りますが、現行の大学入試対策になる学習法としての要約法です。そういう意味では、精読に基づいての要約です。特定の本文に対して、正確性はさておき、とりあえず指定字数で要約を書ききる力がある、という点をぜひクリアしてください。

なお、この点が高いハードルになる方は、今回の記事の次に当たる「入試現代文対策のための要約学習(下)ー キーセンテンス」をお読みいただき、とりあえずのキーワード、キーセンテンスの見つけ方を学習して、自力で指定要約字数を埋めきれるところまで、繰り返してみてください。

方法

では、形式段落を意味段落にまとめなおす方法について述べていきます。

事前の心得

まず一回読む

まず、最初に理解しておかなければならないのは、意味段落にまとめなおすという作業は、原則として本文を1回読んだ後に行うものだということです。本文を1回読んだ後、全体を、読みながらというよりはむしろ眺めながら、全体をいくつかの固まりに分けていく作業です。いきなり、最初から行うものではありません。

このとき、意味段落よりも形式段落は細かく分かれているのが普通なので、形式段落を意味段落にまとめなおす、という言い方を私はしています。まれに、形式段落がとても長く、全体で形式段落が例えば3つしかないような場合は、1つの形式段落を意味段落として分割するようなことを、あくまで要約の便宜としてですが、することもあります。

もちろん、1回目に読むときに、話題の移り変わりから意味段落が分かれる場所に気づくことは少なくありません。そういう場合は、その場所に印をつけておいてください。その切れ目まで、または、それ以降、もしくは両方について、どのような話題なのか分かる場合はメモをするか、該当する言葉に印をつけるか、もしておきましょう。後で読み直す手間が省けます。

意味段落の数

意味段落の総数は、一般的な入試現代文の本文の長さは3000字弱から5000字弱であることから、4〜8段落ぐらいです。より細かく分けたり、大きくしたりすることも文章によっては可能ですが、かえって要約しづらくなりますので、だいたいこの程度の意味段落の総数になるように全体を分けるのがお勧めです。

段落間で共通する用語に着目

意味段落にまとめる方法の1つは、本文で使われている用語の共通性に着目する方法です。例えば、形式段落の第1段落から第3段落までは「A」という語句が多く使われていて、第4段落から第7段落までは「A」ではなく「B」という語句が多く使われるようになったとすると、形式段落の第1段落から第3段落を意味段落の第1段落とし、第4段落から第7段落を意味段落の第2段落とする方法です。この場合、「A」「B」というのは必ずしも単独のキーワードとは限らず、「A」の内容は「〜と〜の関係」といった複数の語句が組み合わさった内容のこともあります。なお、全体を通して頻出の用語は意味段落にまとめる場合では使えません。

この場合、「A」といっても「A’」や「A”」も含む点に注意してください。全く同じ言葉であるとは限りません。同じ意味ではあるけれども、違う言葉で言い換えていることもあります。そういう場合同じ「A」のグループに入れてください。

また、本文が20以上の多くの短い形式段落で構成されている場合に多いのですが、同じ言葉でまとめようとしていくと、まとめる言葉が「A」「B」「A」「C」「B」「C」……というようにかなり細かく、かつ繰り返し出てきて、全体の意味段落が多くなりすぎるような場合があります。このような場合は、思い切って「A」「B」「A」は「A」とし、「C」「B」「C」は「C」とし、「B」は意味段落としては用いない、というように、意味段落の総数の適正化を図ります。また、場合によっては、「A」「B」「A」「C」「B」「C」は、そもそも細かく見過ぎていて、その全体を「D」という別の言葉でまとめて考えたほうがよいこともあります。

いずれにしても、意味段落の総数を4〜8程度という範囲にとどめるのがポイントです。

具体的表現と抽象的表現の対応に着目

次の方法は、具体的な表現と抽象的な表現の対応関係に着目する方法です。最も多いのが、具体例とそのまとめの言葉という場合です。こういう場合はその具体例とまとめの言葉をセットで1つの意味段落として考えます。ただし、もしも、まとめの言葉のところがずいぶんと長くなり、いろいろと説明も増えている場合には、具体例のところとそのまとめのところを別個の意味段落として構成する場合もあるでしょう。

「こうして」や「このように」など「う」の言葉を伴う指示語がまとめの働きをしている場合もあります。その場合は要注意です。その指示語はそれまでの内容をまとめている言葉ですので、それまでの表現が、前記の「具体的な表現」であり、その指示語以下の表現が「抽象的な表現」にあたります。なお、この場合も、前段落で記したことと同様に、「抽象的な表現」を1つの意味段落として独立させるかどうかは、指示内容やその「抽象的な表現」の長さを考えて決定してください。

まとめ

以上、共通する言葉に着目する方法と、具体的表現と抽象的表現の対応に着目する方法を、意味段落にまとめる方法としてお勧めします。なお、それらは、別個に用いるのではなく、組み合わせて使うことのほうが多いと思います。

なお、意味段落にまとめる作業をする場合、できるだけ意味段落相互の論理関係を考えながらまとめるようにします。うまく論理関係が成立しない場合には、意味段落のまとめ方が不適切な可能性が高いと思います。

最後に

最後に、意味段落にまとめる作業をレベルアップさせる方法として、余裕があれば、ぜひ全体を貫く主題を考えてください。意味段落にまとめる作業をする上で、全体を貫く主題を意識できると、その主題を展開する上での各意味段落の働きを理解できます。そうすると、意味段落を作る精度が上がるだけでなく、要約の読みやすさも内容の正確さも格段に優れたものになります。

では、次回「入試現代文のための要約(下)」では、キーワードとキーセンテンスの見つけ方について述べていきます。

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