村上春樹『ねじまき鳥クロニクル第2部予言する鳥編』(新潮文庫)
昔、第1部を途中まで読んで挫折していたのですが、知り合いのある人がスラスラ読みましたという話をしていたので、その言葉に釣られて手に取ると第1部の残りをスラスラ読んで、その勢いで第2部まで読んでしまいました。今日、第3部を買いました。
相変わらず現実離れした感じのする話です。でも、気持ちよく読めてしまいます。行き当たりばったりで展開している話のような感じがするのですが、この行き当たりばったり感が、読むときの計算され尽くしている感を和らげてくれるので、心地よい。そう感じさせるところがプロの技なのでしょうね。会話一つ一つが非現実的なのですが、そのどこかに何か自分自身の深いところにあって言葉にできないようなものが象徴されているような気がしてしまいます。それで読んでしまいます。
佐伯泰英『刺客』(祥伝社文庫)
新装版です。文庫ですが、字が大きめなのが嬉しい。
佐伯泰英という方は時代小説家として有名なのですが、この「密命」シリーズで初めて読ませていただきました。この『刺客』は第4作目ですね。26作目まであるようですが、さて、どうなるかな。漫画以外、このような連作を読みきったことがないので。
第1作目を読んだ時、最初の辺りでは、随分と読みにくいな、と思いました。ごろっとした名詞を助詞でつないだだけのような印象で、何と言うか、口当たりが悪い。それに行間というものを感じることができなくて、物足りない。ところが、しばらく読み進んでいくと、この行間がない、というのがとても心地よいのです。一言で言えば、楽。スイスイと読んでしまいます。
そうするとですね、名詞がゴロゴロと並んでいるのが、ちょうどよくなる。正直言って、私はこの「密命」シリーズを一語一語きちんと読んでいるわけではありません。名詞はけっこう雰囲気だけ味わって読み飛ばしています。でも、物語に関わるところはきちんとわかるように書いてあります。定番の心情、定番の展開に安心感があります。物語の書き方というものの勉強になります。