こんにちは。
本日は、キーワードやキーセンテンスの見つけ方について説明していきたいと思います。
目次
1回目に読むときから印をつけていく
まず、キーワードやキーセンテンスを見つけるタイミングですが、これは1回目に読むときから随時行います。意味段落にまとめなおす作業が、基本的に1回読み終わった後だったこととの大きな違いです。
本文を読みながら、ここが大切だと思ったところに傍線や丸囲みなどの印をつけていきます。この段階では間違っていたとしても気にする必要はありません。自分で大切だと思ったところにどんどん印をつけていきます。
なぜ最初の段階では間違いを気にせずどんどん印をつけていってよいのかは、大切なところかどうかあまり気にしながら読んでいては先に進めないからです。そして、もう1つの理由は、仮に客観的にはそれほど重要ではないとしても、読んでいる当人にとってはそこが本文理解の手がかりであることもあるからです。そこの修正は意味段落にまとめる途中や後ですればいいことです。
見つける方法の実際
ここで、一体どのような言葉や文が、キーワードやキーセンテンスと呼ばれるものであるのかわからない、という人もいると思います。以下、キーワードやキーセンテンスと呼ばれるものの見つけ方を具体的に説明していきます。
繰り返し現れる言葉
まず、繰り返し現れる言葉です。評論を読んでいると、何度も同じ言葉が出てくるものです。それがキーワードです。また、ちょっと言い方が違うだけで同じ主張の文が繰り返し現れることもあります。それがキーセンテンスです。キーセンテンスほどではないですが、キーワードもちょっと違う言葉が使われていることがあるので注意します。
指示語
繰り返し現れる、ということに関連しますが、指示語で受けている言葉や文は要注意です。「これは」もそうですが、「この〜は」という指示語で受けている場合、キーワードである場合がよくあります。評論文の最初のあたりを読んでいるときに、何を言っているのかわからなくて迷子になりそうなときは、指示語で指示されている言葉、及び指示内容を丁寧に確認しながら読んでいくと、頭の中で言葉が像を結んでいくこともあると思います。指示語はそれだけ重要です。
繰り返し現れる言葉が最後まで続いて現れる場合は、その言葉は本文全体のキーワード、キーセンテンスということになります。途中で現れなくなった場合は、意味段落のキーワード、キーセンテンスということになります。
ちなみに、あまり最近の大学入試の流行りではないように思いますが、意味段落のキーワードは「小見出し」の設問になり、本文全体のキーワードは「主題」「タイトル」の設問になります。最近の流行りでいうと、本文構成について聞かれることが増えていますので、意味段落を踏まえた上でその意味段落が本文全体の中で果たす役割などが聞かれます。
具体的表現をまとめる抽象的な言葉
繰り返す言葉に着目する方法は、「入試現代文のための要約(中)ー 意味段落」でも使った方法ですが、もう一つの方法も、そこで使った方法と重なります。それは具体的な表現と抽象的な表現の対応に着目する方法です。そして、この抽象的な表現が、キーワードやキーセンテンスに当たります。
ここでの抽象的な言葉とは、具体的な表現をまとめる言葉です。沢山費やされた具体的な言葉を、ギュッと短い言葉に濃縮したものがこの抽象的な言葉です。ですから、その言葉は当然、キーワード、キーセンテンスです。
「う」付きの指示語
この抽象的なまとめの言葉を見つける方法として、「このような」「このように」といった「う」の言葉を伴う指示語に着目する方法をお勧めします。この「このように」といった指示語はかなり長い範囲、場合によっては形式段落5つ程度の長い範囲を指すこともあるほどです。それをギュッとまとめてくれます。「このような」「このように」の後にキーワード、キーセンテンスが来ます。
「つまり」という要約の働きを持つ接続詞の後にキーワード、キーセンテンスが来るのも定番です。もっとも、要約の働きというより単なる言い換えの場合もあります。
具体例の扱い
具体的な表現と抽象的な表現の対応を考えるに当たり、具体的表現の典型である具体例の扱いについて述べておきたいと思います。
具体例は削除
具体例は、普通、本文をまとめるときにはバッサリ削除します。具体例は、何か言いたいことがあって、その言いたいことをわかりやすく説明するための、いわば道具に過ぎないからです。極端な話、他の例でも代替可能なものです。ですから、本文をザッと理解するためには、具体例のところは読み飛ばすこともあります。本文の道筋を見失いやすい方にとっては、具体例を括弧か何かで括って、無視するようにして読む、というアドバイスが有効なこともあります。
1割を超えたら残す
ただ、注意しなくてはならないのはこの具体例が一定量を超える場合です。その場合には要約に盛り込む方がよいです。では、一定量がどの程度を示すのか、ということですが、どの程度の割合で要約するのかにもよるのですが、少なくともこのブログでお勧めしている2割要約の場合は、本文の1割を超える程度同じ例に触れられている場合には、要約にも入れたほうがよいでしょう。
2割要約は、論理構成のやや細かい点を構成するものであっても拾ってしまう割合ですし、だからこそ、現行のやや細かい点を設問とする入試の対策となるものです。
具体例についての省察
そもそも、具体例と抽象的な表現、以下、「抽象的な表現」は「主張」と言い換えますが、の関係は微妙です。さきほど、例は説明の道具に過ぎない、と述べましたが、やや脱線のきらいはありますが、もう少し詳しく述べておきたいと思います。
1つの主張には射程もあれば背景もあります。1つの主張があらゆる対象に向けられるわけではありませんし、あらゆる場合に妥当するわけでもありません。筆者があえてその点について触れていることは多くはないですが、その点は理解しておきましょう。また、1つの主張が語られるには、普通その背景となるものがあるからであって、何もないところでいきなりその主張が語られることはありません。何らかの背景において何らかの問題意識があって、その主張が語られるものです。
というところから考えると、自ずと明らかになるのは、その主張についての説明である具体例が、主張そのものと全く無関係であることはない、ということです。ましてや、一定量、同じ具体例が記されているとなると、その例と主張の関係は不可分のものとなると言ってよいでしょう。その主張の基となる例があるからこそ筆者はそのような主張を行っている、ということです。
以上のような、例と主張の関係について留意しつつ、基本、具体例は要約するときには削除する、というつもりでいてください。
「第一に」「第二に」
具体的な表現と抽象的な表現の対応からキーワードやキーセンテンスを見つける、という点に戻り話を続けると、今の、まとめの言葉に着目する方法と言葉の現れる順序が逆になりますが、ある話題、または問題意識が提示された後、その点について、「第一に」「第二に」と展開していくパターンがあります。「まず」「次に」、「一つは」「もう一つ」といった言葉でも同様です。この場合も要注意です。
最初に提示された話題、または問題意識、さらに「第一に」「第二に」という言葉の後に続くその内容、いずれもキーワードであり、キーセンテンスです。本文の構造を的確に示してくれています。しっかりと押さえておきましょう。離れた場所にある場合、意外にこの「もう一つなど」見落としています。
以上で、具体的な表現と抽象的な表現の対応に着目する方法を終了し、次の方法に移ります。
文頭・文末表現
これから、述べる方法はかなり細かい、文頭または文末の表現に着目する方法です。
「Aではなく、Bである」
一番重要なのは、「Aではなく、Bである」構文です。評論文で、何らかの主張をする場合、この構造を取っていることがとても多いです。この構文で重要な表現に当たるものは「B」になります。「ではなく」「である」といった文末表現に着目することで重要な内容、つまりキーワード、キーセンテンスである「B」を押さえます。
「Aだけではなく、Bである」
「Aではなく、Bである」構文のバリエーションとして「Aだけではなく、Bである」構文があります。重要な内容は、さきほどと同様「B」です。ただ、ここで気をつけなければならないのは、「Aでなはく、Bである」構文と違って、決して「A」は否定されているのではない、という点です。この点には読解する上で注意すると同時に、実はマーク問題の選択肢にこの「Aだけではなく、Bである」構文が使われていて、典型的な「ひっかけ」問題になっていることがあるので注意しましょう。
そして、この「Aだけではなく、Bである」構文と同様な構造を持っているのが、「Aであると同時に、Bでもある」構文です。「同時に」とありますので、「A」も「B」も同様な重要度でありそうなものですが、日本語の、重要な内容は後ろに来る、という一般的特性のせいか、ほとんどの場合重要なのは「B」です。
逆接の後
また、逆接の後は、一般的に重要な内容が現れやすくなっています。「しかし」「ところが」「だが」などの後です。「確かにA、しかし、B」といった譲歩逆接構文は多くの方がご存知のことと思います。重要な内容は、もちろん「B」です。逆接と、前述の「Aではなく、Bである」構文が組み合わされて、「しかし、Aではなく、Bである」という形を取る場合、とても重要な主張であることは、ほぼ間違いありません。
ただ、逆接は文章の中で使用回数がとても多く、その逆接の後の表現が必ずしも重要な表現とは限りませんので、逆接の後は重要な内容であることが多い、ぐらいのつもりでいるほうがいいでしょう。
二項対立
そして、これは直接、キーワード、キーセンテンスの見つけ方というのではないと思うのですが、一般的読解方法でキーワード、キーセンテンスを見つけるために有効な視点を紹介したいと思います。それは二項対立(対比)です。今さら、という感もあるかもしれませんが、やはり重要な視点であり、必ずしもこの点について的確に読み取れているとは限りませんので、注意してしすぎることはないと思います。
二項対立を見つける上では、「~に対して」「一方」などの言葉が目印です。
評論文は対比の構造で書かれているものが非常に多いです。評論文はたいてい抽象的なわかりづらい事柄について書かれていますので、それをわかりやすくするために、対立する反対の事柄と比較しながら論を進めることが多いのです。ですから、この対比されている二つの事柄、そして、ほとんどの文章ではそれらのどちらもが重要なのではなく、どちらかが筆者の主張したい事柄ですので、それを正確に押さえます。
そして、さらに対比の構造で注意したいのが、どのような点で対比されているのか、ということです。何と何が、どのような点で対比されているのか、これら3点、いずれも重要な点であり、つまり、キーワードであり、キーセンテンスです。なお、対比ではなく、何かと何かが同じだ、という場合も、何と何が、どのような点で同じなのか、これら3点を確実に押さえることが大切です。
備考
タイミングの省察
あとは、これらキーワードとキーセンテンスを見つける方法を用いる段階について、本日の記事の最初で触れていることではありますが、もう一度、今度はやや詳しく説明させていただきます。
読解のためにキーワード、キーセンテンスを見つける段階と、要約のためにキーワード、キーセンテンスを見つける段階を切り分けましょう。本文を最初に読む段階では、あくまでも読解のためにキーワード、キーセンテンスを見つけるに過ぎません。見つける、というよりキーワード、キーセンテンスと思えるところに印をつけながら先へ進む、といった方がより適切かも知れません。
これに対して、要約のためにキーワード、キーセンテンスを見つけるのは、本文を1度読み終わってからであり、本文全体を要約しよう、全体を俯瞰しよう、鷲掴みしよう、という意識で行います。また、それは意味段落にまとめなおす作業とともに、しかし、どちらかと言えば構造的には意味段落をまとめ終わってから、行うものであり、意味段落を確定させてから、最終的にキーワード、キーセンテンスを確定させていきます。
1回目に読むときに主観的に印を付けたキーワードやキーセンテンス、また重要構文だからといってとりあえず印を付けた表現、これらは全体の見通しのなかでもキーワード、キーセンテンスであるとは限りません。これを見極める必要があります。また、場合によっては、1回目に読むときにはそれほど重要な表現だとは思っていなかったものが、実はキーワード、キーセンテンスだったということもあります。
要約のためのキーワードやキーセンテンスの確定は、意味段落の決定を待ってからしてください。
要約は解法ではない
さて、終わりに当たっての注意点です。それは、今、この記事で述べていることは、あくまで「入試現代文のための要約」であるということです。要約ができるということはそれ自体が重要な国語力であり、また国語力を向上させる上での重要な学習法であるとも私は考えており、この要約という作業を現行の大学入試対策としても効果的に使えるようにカスタマイズしたのが、この一連の記事の内容です。
つまり、この要約法それ自体は、入試問題の解法ではないということです。この点、誤解のないようにお願いいたします。もちろん、部分部分においては、この要約法で触れた方法を入試問題の解法や読解法として用いることは可能です。しかし、解法そのものではありません。
入試問題を解く場合は、その問題によって、具体的には過去問に見られるその特徴によって、解き方が変わります。大きく言っても、近年のセンター試験、記述式の国公立二次試験、私大型と三つに分かれますし、私大型は私大型で一括りにすることは無理があるほどです。
「過去問を使った2割要約学習法」は、入試対策としてとても有効な学習法であると思っていますが、あくまで要約法です。その要約法の特徴として、現行の現代文入試対策に適した精読をするための有効なトレーニングになっている、ということです。
私の要約手順
最後に、要約を「書く」ときの私の手順を記しておきます。課題文を一回読み終わり、さらに意味段落を確定させてからのものとお考えください。
まず、印をつけたキーワード、キーセンテンスを確認し、意味段落間の論理関係を基礎に、絶対に必要なキーワードとキーセンテンス、及びそのつなぎの言葉を決め、全体の流れをつくります。この流れが出来た段階で、そのときのおおよその文字数を確認し、あとどれくらい書けるのかを計算します。
文全体を眺めながら、印をつけた重要表現の中から、全体の流れを軸とした優先順位に基づいて、残りの文字数に入るように肉付けレベルのキーワード、キーセンテンスを決めます。
そうしたら、いよいよ書いていきます。極力、キーワードやキーセンテンスの現れる順番を本文と変えることなく、自分の言葉を交えることなく書き進めます。1文が長すぎることなく、長すぎる連体修飾語句を使うことなく、わかりやすい表現であることに常に注意を払います。きちんとした結論のある課題文ならば、常にその結論に向かって書き進めることが大切です。
最後に、書き終わったら読み直し、日本語としておかしいところ、論理のつながりが悪いところは、修正可能ならば修正します。以上のようになります。
余談ですが、私の要約法というならば、後日その要約を見直して、多くの場合ため息をつきます。間違っているから、というのではありません。間違っている場合には、ため息ではなく冷や汗です。もちろん、これもないとは言いません。
ため息をつくのは、具体例や、主張自体の説明をどの程度要約に盛り込むのか、いつも考えてしまうからです。
抽象的な言葉を適切に使いつつ、網羅的になされた要約というものは、要約した本人にとってはその内容を思い出す最適なアイコンです。また、その内容に精通している方やその本文を既に読んでいる方にとっても便利なものでしょう。
しかし、その本文を読んだことがない方やその手の話題に詳しくない方にとっては、何を言っているのかわからない要約になりがちです。
もちろん、一口に要約といってもその目的によって適切さの判断基準は異なるとは思うのですが、そういったものを離れて、ふと自分の要約と向き合ったときに、ため息をついてしまいます。
もちろん、ため息はつきつつも、入試現代文のための要約、という範囲はカバーできていると思っていますが…。
謝辞
これで「入試現代文のための要約(下)ー キーセンテンス」は終わりです。3回の長きにわたりおつきあいいただき、ありがとうございました。