こんにちは
以前、現代文の要約学習について上中下と3回にわたって書きました。そのときの要約は課題文を2割に要約するというものであり、その目的は現行の入試現代文対策でした。
今回は、2割より短く要約する要約学習について書きたいと思います。
まず、2割より短く要約するといっても、ではどの程度を想定すればよいのでしょうか。基本的には、1割以下と考えてください。4000字の課題文とすると、400字以下ですね。センターの評論文を原稿用紙1枚に要約する感じです。200字程度でも効果的です。200字というと一橋大学の要約問題と似た感じですね。もっとも、一橋大学の課題文はもう少し短いものですが。
では、次にその要約はどのような効果があるのでしょうか。それは課題文の論点を明確にする効果です。1割以下で要約しようとするならば、論点を明確にしておかないと適切な要約はできません。どうしてでしょうか。
それを理解するためには、2割要約の意味を思い出してみましょう。2割という割合は、課題文を「そのまま」圧縮するのに丁度よい割合でした。野菜や果物のフリーズドライをイメージしてみてください。原形をきれいに保っているでしょう。
それに対して、1割より圧縮率を上げた要約ではもうフリーズドライにはなりません。壊れてしまいます。1割より圧縮率を上げた要約は、フリーズドライではなくもはやジュースです。原形を保っていません。しかし、よくできたジュースの場合、バナナならバナナの風味がより濃厚に味わえるはずです。
このように1割要約は、圧縮しすぎてもとの形を保つことができないため、よりエッセンスを伝えるものでなくてはなりません。そのエッセンスが論点です。課題文全体を「そのまま」要約するのではなく、論点を明確にしそれ以外の部分は最初から切り捨てるか、論点を中心に構成することで他の部分はかなり簡略化するかしなければなりません。
では、適切に論点を把握するためには1割以下の要約のほうがよいのなら、常にそのような要約学習をすればよいのでしょうか。それに対する回答は、論点把握だけを目的にするのならば、確かにその通りです。
しかし、極めて圧縮率を上げた要約には一つ欠点があります。それは、細かいところの読みが雑になるという点です。逆に言えば、細かいところの読みは雑でも論点さえ押さえてしまえば、要約が書けてしまうのです。圧縮率が上がれば上がるほどそうです。
このような超圧縮型要約の欠点は現行の入試においてはかなり大きな問題です。なぜなら、現行の入試現代文の大半の設問は、この細かい読みが出題されるからです。課題文全体の論点が問われるような設問は大問1つにつき1問程度です。となると、このような要約ばかりやっているわけにはいかない、ということになります。
つまり、1割より短くする超圧縮型の要約をする場合、課題文の細部を読むトレーニングとしては不向きではあるものの、本文の論点という、ある意味その文章の核を押さえるのにはとても有効であるため、課題文の論点を理解するトレーニングとして学習のなかに位置付けていきましょう、ということです。